研究内容について

本研究室の名称は、「機能材料・プロセス工学研究室」になります。
そもそも、「機能材料」、「プロセス工学」の意味が分かりにくいかもしれません。

本研究室では、「機能材料」を「Si半導体を超える物性・機能を持つ新しい電子材料」と捉えています。

その他にも「従来の絶縁体と比べて巨大分極が誘起できる」、「電圧印加により生じた分極が消えない」という特徴を持った「強誘電体材料」にも着目し、様々な機能材料と強誘電体を複合した新しいデバイスの創出を研究テーマの中心としています。
現在、機能材料として、「ワイドギャップ半導体」、「二次元物質」、「誘電体ナノシート」、「高温超伝導体」などに着目しています。
また、強誘電体材料としては、従来より本研究室で研究対象としてきた「BiFeO3」、「Pb(Zr,Ti)O3」や「有機強誘電体VDF-TrFE」を主に用いています。
これらの機能材料と強誘電体を融合させる事で、「低損失なパワーデバイス」、「高密度化と機能性を兼ね備えた消えないメモリ」、「多様な動作を可能とする新しいトランジスタ」等の高機能なデバイス創出を目指しています。
 
 

次に「プロセス工学」についてですが、当研究室では「様々なデバイス形成プロセス」と捉えています。


電子デバイスは、電子材料を作っただけでは動作しません。電子材料に対し、デバイスデザインに基づいたエッチングや薄膜堆積、表面改質、電極形成、欠陥回復などの多くのプロセス(工程)を経て、初めて電子デバイスとして動作する事が出来ます。
当研究室では、「実際に動作するデバイス」を念頭に置き、上述の機能材料に対して同時にデバイスプロセスを検討する事に取り組んでいます。

基本的な考え方は伝統的なSi半導体に対するデバイス形成プロセスに倣って検討をしますが、「新しい機能材料ならではの制約」が時として問題になる事もあります。例えば、前述のエッチングや薄膜堆積だけでも(本当はもっと多くの方式がありますが)「ドライ方式」と「ウェット方式」があり、対象物質に対する「プロセスレート」や「サイズ・形状」といった目的に沿って、各々が一長一短の特徴を持っています。

このような「新しい電子材料であるが故に生じる課題や目的」に適したデバイスプロセスを導き出す研究に取り組んでいます。


 



その他、参考までに川江准教授が過去に行った研究テーマ・分野の一部は下記のようになります。
 ・高品質な酸化物高温超伝導体薄膜の作製
 ・自然超格子構造を利用した超伝導単電子対トランジスタの創出
 ・テラヘルツ発振デバイスを指向した微小超伝導トンネル接合アレイの開発
 ・非鉛強誘電体材料の探索
 ・薄膜積層構造を利用したエンジニアードマルチフェロイック物質の創成
 ・極限環境での動作を指向した強誘電体キャパシタの開発
 ・ヘテロエピタキシャル成長に伴う歪を利用した強誘電体薄膜の創出
 ・電荷注入型不揮発メモリデバイスの開発
 ・環境に優しい酸化物デバイスプロセスの開発
基本的には、上記の研究テーマの遂行で得られた知見を基に現在の研究に取り組んでいます。