酸化物電極上でのBFO強誘電体薄膜の低温物性評価

研究背景

 近年,コンピュータなどの情報機器は急速な進歩を遂げ,われわれの生活に欠かせないものとなっています.中でも,

メモリ素には,更なる高性能化,低消費電力化が求められ,DRAM(コンピュータのメインメモリ)などの高速動作と,

FLASHメモリ(USBリー) などの不揮発性といった特徴を併せ持つメモリの研究開発が行われています.このような

不揮発性メモリのひとつであFeRAM (Ferroelectric RAM)強誘電体を用いることで分極方向によりデー

タを記録します.FeRAM低消費電力という大な利点を生かし,電源を搭載できない非接触ICカードなどにむけて最

も実用化が進んでいます

 


 この強誘電体として最も実用化が進んでいるのが Pb(Zr,Ti)O3(PZT)です.しかし,これに含まれる鉛(Pb)は有

毒物質ですから,国際的に使用を禁じる流れがあります.そこで現在PZTに替わる鉛を含まない強誘電体の開発が行わ

れています.そのなかでBiFeO3BFOPZTよりも「電源を切ったときに蓄えることが出来る電荷の量」が多いの

で 盛んに研究が行われてきました.

 


 しかし,このBFOにはリーク電流が多いという問題があります.これではせっかく蓄えた情報が漏れ出してしま

い,メモリとして使ません.この対策として私たちの研究室ではBFOBiFeを他の元素と入れ替える元素置換を行う

ことでリーク電流を抑える こに成功しました.しかし、元素置換が強誘電特性に与える影響や、リーク抑制のメカニズ

ムについては詳細には分かっていません.その解明を妨げているのはやはりリーク電流です.

研究内容

 元素置換が強誘電特性に どう影響するかを議論するためには、正確な測定結果が必要不可欠です。しかし、リーク

流があると強誘電特性の正確な測定が困難になります。そこで本研究では低温環境で測定を行うことで、リーク電流

響を少なくした状態MIMキャパシタの評価を行いました。

         

 

このように温度を下げることでリーク電流に隠れていた本来の特性を見ることが出来ます。また、-173℃ まで到達する

温環境でのみ起こる現象などもあり、室温では分からなかったことが見えてきます。

 

MIM型キャパシタ構造について

  Metal-Insulater-Metalの形をしたキャパシタ。ここでは強誘電体を金属で挟んだ構造の試料を扱っています。

    酸化物電極について

下部に酸化物電極を利用することにより様々な利点があります。例えば、代表的な強誘電体の一つであるチタン酸ジルコン酸

PZT)のMIM型キャパシタ構造において、下部電極を金属ではなく、酸化物にすることにより様々な恩恵が得られました。そ

の恩恵の例として、鉛の拡散抑制、疲労特性向上、界面欠陥の抑制、単一配向膜の作製などが挙げられます。

 

 

研究業績一覧

>国際会議<

“Temperature dependence of ferroelectric properties in (Pr, Mn) codoped BiFeO3 thin films”

Y. Nomura, T. Tachi, Y. Seto, T. Kawae and A. Morimoto,

 The 9th International  Meeting of the Pacific Rim Ceramic Societies conference (PacRim9), Cairns, Australia, 2011, 7

 

>国内会議<

Pr, Mn二元素置換BiFeO3薄膜の低温物性評価」,立居 卓志,野村 幸寛,瀬戸 佑一郎,川江 健,森本 章治

平成22年度 応用物理学会 北陸・信越支部学術講演会,2010,11.19-20,金沢大学

CSD法により作製されたPr, Mn二元素置換BiFeO3薄膜の疲労特性評価」, 瀬戸 佑一郎,野村 幸寛,立居 卓志,川江 健,森本 章治

   平成22年度 応用物理学会 北陸・信越支部 学術講演会,2010.11.19-20,金沢大学

 

Pr, Mn二元素置換BiFeO3薄膜の低温物性評価」,立居 卓志,野村 幸寛,瀬戸 佑一郎,川江 健,森本 章治

58 応用物理学関係連合講演会,2011.3.24-27,神奈川工科大学

CSD法により作製されたPr, Mn同時添加BiFeO3薄膜の疲労特性評価」, 瀬戸 佑一郎,野村 幸寛,立居 卓志,川江 健,森本 章治

   平成22年度 58 応用物理学会学術講演会,2011.3.24-27,神奈川工科大学