BST薄膜キャパシタの歪み誘起強誘電特性


研究背景

 高・強誘電体デバイスは各方面で重要な役割を果たしており、様々な研究が進められています。誘電体材料において、基板上に堆積させる際に膜中に応力がかかり、歪みが発生することがあります。この歪みによって本来の膜が持つ特性が大きく変化するという問題があります。この問題に対して、基板の選択や成長パラメータを検討することにより望ましい誘電特性を設計することや、逆に歪みを利用することによって選択した材料の薄膜における特性を増強させることが期待されています。
 この研究では格子構造と電気特性、誘電率の振る舞いの相互作用を理解するために、堆積させる誘電体の膜に対し応力を印加してその特性の評価を行います。特に、多くの高誘電材料の中でも低い誘電損失とチューナビリティの高さから注目されている(Bax,Sr(1-x))TiO3 (BST)に対して各種検討をしています。


BSTとは

 BSTは下図のように強誘電体の代表的な結晶構造であるペロブスカイト構造ABO3をしており、バリウム金属、ストロンチウム金属はAサイトに、チタンはBサイトに、酸素はOサイトに配置されています。BSTはBa、Srの組成によって、キュリー点及び結晶系が変化します。Ba、Srの組成比に対しBaが7より小さい場合は立方晶(cubic)であり室温において常誘電体ですが、7以上では正方晶(tetragonal)となり室温では強誘電体となります。このように組成によって特性を変化させる事が出来ることや、高い誘電率・チューナビリティ・低い誘電損失といった利点を持つことから、高密度DRAMやチューナブルマイクロ波デバイスなどの材料として注目されています。


図1 ペロブスカイト構造概念図


研究内容

  BSTにおける歪みの影響として構造がcubicからtetragonalに変化することによる強誘電性の発現などが挙げられます。 また構造が変化することにより誘電率やチューナビリティも変化することが報告されています。
この研究ではその様々な変化を引き起こす歪みの影響を理解するため、基板と膜との界面の状態や熱膨張係数の違い、印加応力を変化させ、膜中の歪みを変化させた試料を作成、評価を行っています。
 



図2 歪みイメージ

 

業績

国内会議
・YSZフレキシブル基板上における(001)配向(Ba0.6Sr0.4)TiO3薄膜の作製と評価 
棟朝 賢史朗, 小澤 拓矢, 西村 友希, 川江 健, 森本 章治
平成22年度北陸・信越支部講演会 2010,11.19-11.20 金沢大学