酸化物デバイス用LaNiO3電極薄膜の作製と評価
1 研究背景・目的
電子デバイスの高機能化は、様々な物性を有する材料を選択的に用いることにより実現されてきましたが、中でもペロブスカイト型酸化物材料は強誘電性や高誘電性、圧電性など様々な特性を有するものが数多く存在し、これらの薄膜材料導入による現行するデバイス性能向上や新規デバイスの創生が期待されています。誘電体薄膜等における種々の特性は配向方向により大きく特性が変化することが知られており、結晶配向制御が非常に重要であるといえます。一般に酸化物薄膜の配向制御には、所望のエピタキシャル成長を促す基板を用いられます。しかしこの方法では堆積させる材料に対し選択できる基板が限定されてしまうため、デバイス応用を考える上で大きな問題となってしまいます。
そこで本研究では、任意の基板上でペロブスカイト型酸化物薄膜を配向制御する方法として、(100)方向に強い自己配向性を持つLaNiO3
(LNO)のテンプレート層としての利用について調査を行っています。
2 LNOとは
LNOは様々な基板上で(100)方向に自己配向する性質が報告されています。またLNOは擬立方晶ペロブスカイト構造であり、ペロブスカイト型酸化物材料のエピタキシャル成長が起こりやすいと考えられます。したがって、図1に示すようにLNO薄膜をテンプレート層として導入することにより、従来困難であった基板上においても単一配向ペロブスカイト型酸化物薄膜の作製が期待されます。さらにLNOは導電性を有しているため、テンプレート層に加え下部電極としての役割も併用すること可能です。
3 研究内容
各基板上にLNOを堆積させて、その自己配向性より(100)方向に結晶成長したLNO薄膜を作製します。XRDを用いて試料の結晶性確認した後、LNO薄膜上でエピタキシャル成長が期待される様々なペロブスカイト型酸化物を試料に堆積させます。この酸化物薄膜がエピタキシャル成長により(100)単一配向となるか確認することで、LNO薄膜のテンプレート層としての効果を調査しています。図2はLNOテンプレート層により、ペロブスカイト型酸化物の高誘電体材料(Ba,Sr)TiO3
(BST)がSi基板上で(100)方向に結晶成長したものです。