
近年の集積回路製造においてその微細化は留まることを知らず、
現在では45nmオーダーでの微細配線が可能です。
微細化はチップの小型化・低電力化・高速化に繋がる大きなメリットを持っています。
- ●集積回路製造に用いられる微細加工は主にフォトリソグラフィ技術を利用して作製したレジストパターンを用いて行われます。 通常金属の微細加工はプラズマを利用した反応性イオンエッチング等で行いますが、 この方法では耐酸性があり安定な金属を用いる場合、その加工が困難であることが予想されます。
- ●私たちの研究室では2002年にレーザリフトオフ法と呼ばれる新しい金属微細加工技術を提唱しています。この方法は 非常に容易な方法で金属の微細加工が可能です。本研究ではレーザリフトオフ法を用いてデバイス素子を作製することにより、 レーザリフトオフ法の産業応用するために必要な課題や問題点を明らかにしています。
- ●レーザリフトオフ法は下図のように主に4つのプロセスに分かれます。 この技術のポイントはパルスレーザを用いていることです。 パルスレーザを物質に照射するとアブレーション(剥ぎ取り)という現象が起こり、 物質は瞬間的に高温となって一瞬にして気化します。 このアブレーションのメカニズムがレーザリフトオフ法に密接に関係しています。
- ●これまでにレーザリフトオフ法による様々な金属の微細加工を実現しており、従来のプロセスでは加工困難である白 金においてもその微細パターンを実現しています。最近では、レーザリフトオフ法を用いた強誘電体キャパシタの電極 作製にも成功しました。
- ●また金属薄膜のリフトオフだけではなく、透明基板を用いて基板裏面よりレーザを照射することにより酸化物アモルファスのパターニングを 行うことができました。
- ・レーザリフトオフ法によるPb(Zr,Ti)O3強誘電体薄膜キャパシタの作製と分極疲労特性評価
寺谷仁志、大坪 茂、川江 健、森本章治、久米田 稔
第68回応用物理学会関係連合講演会
2007、9、北海道工業大 - ・レーザリフトオフ法によるPb(Zr,Ti)O3強誘電体薄膜キャパシタ電極の作製と電気特性評価
寺谷仁志、川江 健、大坪 茂、森本章治、久米田 稔
平成19年度応用物理学会北陸・信越支部学術講演会
2007、12、富山大 - ・レーザリフトオフ法を用いた酸化物パターニングの検討
大西史哉, 川江 健, 大坪 茂,森本章治
2009、11、富山県立大 - ●現在、金属の微細パターンだけではなく、レーザリフトオフ法を金属酸化物材料に対してもてきようできるように研究を進めています。
- ●また、レーザリフトオフ法の加工精度を高めることにより、サブミクロン領域(1μm以下)における配線技術としての応用を目指すと共に、様々なデバイスへの応用を目指しています。
研究概要
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1.基板上に有機材料の薄膜をコーティングします。この有機材料は一般的なWaxのようなものや樹脂を用いています。 | ![]() | 2.パルスレーザを金属マスクを通して照射することで、光を任意の場所に照射します。照射された部分のみがアブレーションされて、有機膜のパターンが基板上に出来ます。 |
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3.その上から金属薄膜を一様に堆積させます。堆積方法はパルスレーザアブレーション(PLA)法と呼ばれる方法で、あらゆる金属を加工することが可能となります。 | ![]() | 4.最後に全体にもう一度レーザを照射することで金属薄膜の加熱を行います。金属薄膜の下に有機膜がある場合レーザによって発生した熱が有機膜に伝わって蒸発し、上にある金属と共に除去されます。その結果作りたい部分に金属のパターンが出来ます。 |
これまでの研究成果
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(左)アモルファスSrRuO3(SRO)の光学顕微鏡写真 | (右)触針式膜厚計による断面図 |
1μmは1/1000mmですので、50μm間隔のラインパターンは髪の毛よりも微細なパターンを作製することができています。 |