AlO薄膜の作製とその評価







Intelの共同創業者ゴードン・ムーアが1965年に提唱した集積度が18〜24ヶ月で2倍になるという「ムーアの法則」に従い、近年集積回路の 微細化は進む傾向となっています。
集積回路の進化はチップの小型化、高速化、省電力化をもたらし、そのメリットを得るため、製造技術はますます進歩してきましたが、微細化によるある限界が見え始めてきました。
集積回路に用いる素子の一つにチップコンデンサがあります。微細化に伴い、コンデンサを形成する部分の面積Sも小さくなるので、ある一定の静電容量が保てなくなります。
以下の式に示すように、微細化により面積Sが小さくなると静電容量Cが小さくなります。静電容量が小さくなると閾値が定められなくなり、メモリとして利用することが出来ません。そこで現在3次元加工・high-kゲート絶縁膜の利用・相変化や磁性を利用したメモリなど新たなメモリ構造が模索されています。




試料作製後の500℃程度の熱アニールにより最もリーク電流を抑制

基板−トンネル層間に熱酸化SiO
2を挿入することにより
リーク電流を抑制し、C-V特性も改善







これまでは試料作製時のターゲットはAl2O3で電荷蓄積層を作製する前後でチャンバを開閉し、試料が大気にさらされていましたがin-situで作製可能なAlを用い大気暴露することなく作製します。

基板−トンネル層間に熱酸化やスパッタリング法によりSiO2層を挿入することにより特性の改善を目指します。

メモリ構造

Si substrate

Al2O3

←ブロック層

←電荷蓄積層

←トンネル層

Al-rich Al2O3

Al2O3

Al gate electrode

Alはユビキタスな材料であり、安価で扱いやすい
スパッタリングなどの既存の方法によって
低温で均一に作製でき、加工が容易
低電圧の印加によってデータの保存・消去が可能
大きなヒステリシス特性を持つ
といった特徴があります。

右図は現在提案されている絶縁膜トラップ型のAl2O3メモリ
電圧を印加するとキャリアがメモリ全体を移動する。
電荷蓄積層を通るとき、化学量論的に過剰なAl原子や
酸素欠損などによる欠陥部分にキャリアが蓄積される。
これらを留めるためにAl
2O3層でキャリアをブロックする。
蓄積されたキャリアの量を検出電流である閾値で"0"か"1"
を判断し、情報を記憶する。
1.
Transport and Optical Characteristics of Al-rich AlO Film and its Application to a Nonvolatile Memory
S. Nakata, S. Nagai, M. Kumeda, T .Kawae, A. Morimoto, Y. Katagiri,T. Shimizu
The 2007 Material Research Society Fall Meeting
Boston, USA, 2007、11


2.
Al-rich Al-O薄膜の光学吸収特性および電気輸送特性
中田 俊司、長井 進吾、久米田 稔、川江 健、森本 章治、片桐 祥雅、清水 立生
第68回 応用物理学会関係連合講演会(秋期講演会)
2007、9、北海道工大


3.
熱処理後のAl-rich Al-O不揮発メモリー特性
長井 進吾、寺田 京平、川江 健、森本 章治、久米田 稔、中田 俊司、清水 立生
第68回 応用物理学会関係連合講演会(秋期講演会)
2007、9、北海道工大

研究業績一覧

これまでの研究成果

Al-O薄膜の特徴

研究背景

今後の予定

静電容量の関係式。集積回路においてコンデンサは情報を記憶する種々のメモリとして利用します。

研究内容



メモリとして使用する材料として、Al(アルミニウム)の酸化物であるAl2O3(アルミナ)をよりAl-rich(アルミに近い組成)にすることで、メモリ効果を持つことが報告されているAl-Oという薄膜材料があります。
そこで本研究では絶縁膜トラップ型の不揮発性メモリとしてAl2O3,Al-O積層膜を作製し、種々の特性について評価していきます。